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温心堂漢方診療・概略

漢方総論

【1】漢方について

■ 漢方とはなんでしょう?

漢方は、中国古典医学を基盤とし、日本において独自に発展してきた伝統医学です。
二千年以上にわたる臨床経験の積み重ねに基づき、心と身体(肉体)を一体として捉える医学体系です。

西洋医学が臓器や疾患を中心の「分析的医学」であるのに対し、漢方は全身のバランスを整える「統合的医学」の一つといえます。

漢方薬は単なる民間療法ではなく、医療用医薬品として保険適用され、多くのエビデンスが蓄積されています。

■ 婦人科と漢方の深い関係

婦人科疾患の多くは、

  • 月経周期というリズム
  • ホルモン変動
  • 自律神経の影響
  • 情緒との関連

と密接に関わっています。

漢方は古くから「血」「水」「気」の巡りを重視し、
女性の身体を“変化する身体”として理解してきました。

月経痛、月経不順、更年期障害、冷え症、不妊症など、
まさに漢方の得意分野です。

■ 漢方の特徴 ―「証」という考え方

漢方は、病名だけでは漢方薬を決定しません。
「かぜ」なら葛根湯というわけにはいきません。

その人の病状を四診という四つの独特の診察法によって総合的に判断します。
このようにして組み立てられた診断名は、「証(しょう)」として分類され、

それに基づいて漢方の処方が決まります。

同じ月経痛でも、

  • 冷えが強い人
  • のぼせを伴う人
  • ストレスが強い人
  • 体力が低下している人

このような方々では処方は異なります。

個々の体質に合わせて処方を選択することが、漢方診療の最大の特徴です。

■ 西洋医学との補完関係

漢方治療において、西洋医学を否定することはありません。
必要な検査や薬、ホルモン療法、外科的治療は大切な選択肢です。

そのうえで、

  • 原因がはっきりしない不調があるとき
  • 検査では異常がない病気のとき
  • 繰り返す慢性的な症状

に対して、漢方が力を発揮します。

西洋医学と漢方は対立するものではなく、互いを補い合う医療です。

■ 温心堂レディースクリニックの漢方診療

当院では長年の臨床経験に基づき、ひとりひとりの体質や背景・心的状態までを含めて診察します。

漢方は単なる薬の処方ではありません。
身体の内側から整え、再発しにくい体質へ導く医療です。

女性の一生に寄り添う医療として、漢方診療を中心に据えた婦人科診療を行っております。

 

コラム~1
 漢方を紐解いていくといくつかのキーワードに巡り合います。
それは非常に興味深いことであり、いにしえの先人たちの思想や哲学と深いかかわりがあり、なおかつ、学問の理論としても当然、その思想背景をその中に組み込んで成立させたのだろうと思われます。

 それは先ず第一に、陰陽・五行の思想であり、人の身体も病気の成り立ちも例外ではありません。
 『気』の動きや働きについても同様で、人体を構成するあらゆるもの、あらゆる働き、さらに人体に影響を及ぼすあらゆる’病気’や’病状’、症状の動きや進行の仕方、病理などについても『気』が深くかかわっていたことがわかります。

診察の道具や手段がほとんど皆無の時代において、人々が診断・治療する方法は極めて限られていましたから、これらの思想・哲学や『気』の動きを、そのために応用することはごく自然のことでした。
 現代人よりも研ぎ澄まされた感覚の持ち主だった古代の人々は、今の我々からすると至極当然のように神秘的な力を発揮できる何かの手段をもって、現代まで続く伝統的な漢方の診断法を見つけていったのかもしれません。

次の項では、その中心である『気』と『経絡』について述べたいと思います。

【総論2】

■なぜ『気』と『経絡』を重視するのかについてお話します

■西洋医学と東洋医学の双方を大切にしながら診療を続けるなかで、私自身が強く感じてきたこと

それは、人の身体は「目に見えるものだけでは説明しきれないところがある」、という事実です。

  • 検査では異常がないのに続く不調。
  • 数値は整っているのに感じる疲労感。
  • 治療しても繰り返す症状。

例えば、

  • 原因不明で月経痛がひどく(月経困難症)出血が多い(過多月経)。
  • 原因の分からない頭痛や全身の痛み・肩こり・こわばり・緊張がある。
  • 排卵期や月経前になると必ず体調を崩す。
  • のぼせや動悸、不安感が持続し、精神的にきつい。
  • 夫婦ともに検査は正常なのに、妊娠できない。

こうした症状や状況は周囲にはなかなか理解されないこともあり、
生活に支障をきたすことも多く、仕事にも差し支える。

こうした方々を診ていると、
現代医療の「異常がない」という説明だけでは何かが足りないことに気づきます。

身体には確かに変化が起きている。自覚症状もある。
しかしそれは、数値として現れるまでの変化ではない。

それは、’自律神経失調’や単なる’疲れ’や’バランスの問題’など、あいまいな表現として片づけられ
しまいには心療内科などの向精神薬をすすめられたりすることもあります。

冷えが強いとき。首や肩、頭蓋骨、背骨や骨盤、さまざまなところに緊張があるとき。
これらのときも体にとってかなりの負担になることは間違いない。

ではなぜこうなったのでしょうか?

そうした所見が積み重なると、症状の背景には、
現代医学では測定不能な未解明の原因の存在に突き当たります。

「巡りの停滞」や「調整機能」の乱れ、それは何を意味しているのでしょうか?

東洋医学の基本は『気』の存在です。たとえば
「気の滞り」
「気血の不足」
「陰陽の失調」など、東洋医学にのみ存在する概念があります。

長年の診療の中で、これらの概念が単なる比喩ではなく、
臨床的な実感を伴う言葉であることを確信するようになりました。

そして、この“目に見えない働き”を診る視点が必要なのだと考えるようになりました。

 

■ 東洋医学の基本は、全体を診るということ

東洋医学の基本は、身体を部分ではなく「全体」とて捉えることにあります。
臓器だけではなく、血流だけでもなく、ホルモンだけでもない。

身体の中をめぐる働き、全体を見つめることが必要だということ。
その中心にある概念が、『気』です。

 

■ 『気』とは何か

気とは、特別な存在ではありません。
東洋医学においての『気』とは、生命を動かしている働きそのものを指します。

呼吸、循環、代謝、体温調節、水分調節、感情の動き――
それらはすべて『気』の「働き」です。

目に見える“物質”ではなく、身体を動かしている“機能”や“流れ”。
その働きの総称が『気』ということになります。

すなわち『気』とは『生命(いのち)』
だということに気づきます。

『気』が滞れば、巡りが悪くなり、痛みや、痞(つか)えが生じます。
『気』が不足すれば、疲れやすくなります。
『気』が乱れれば、自律神経も乱れ、働きも乱れます。

冷えやのぼせが「気の変動」と深く関係していることは決して少なくありません。

 

■ 『経絡』とは

しかし、『気』は単独で存在するわけではありません。
『気』は、体の中で動いており、巡っています。

では『気』はどこにあって、どのように存在しているのでしょうか。

東洋医学では、身体には気の通り道があると考えます。
それが『経絡』です。

『経絡』は『気』が流れる「ルート」であり、臨床的に反応が現れるところです。

『経絡』上には、『経穴(けいけつ)、いわゆる“ツボ”』が存在します。

『経穴』は押すと痛身を感じる部位でもあり、複数の『経絡』や内臓(五臓六腑)をつなぎ、信号をやり取りするポイントでもあります。
私は長年の臨床経験の中で、この『気』と『経絡』の反応が診断と治療に深く関わることを学びました。

 

■ なぜ、『気』と『経絡』こだわるのか

漢方薬は、単に症状を抑える薬ではありません。

その人の「気の状態」や「巡り」に合わせて処方することで、
身体全体の調和を整えていきます。

同じ病名でも処方が異なるのは、『気』の状態が違うからです。

私は診療を続けるなかで、女性の身体はとくに『気』の影響を受けやすいと感じてきました。

月経はまさにリズムであり、妊娠・出産・更年期は大きな変化をもたらす時期です。

その変化を支えているものこそ、目に見えない生命の働き――
すなわち、それが『気』、なのだと考えています。

コラム~2
 次に、温心堂では、どのように診断するかを述べていきたいと思います。

 本来、漢方は四診(問診・視診・聞診・切診)と言われる診断法を用いて状態を把握します。
また日本漢方は腹診を重視し、虚証や実証を患者さんの体質に当てはめ、『証』も処方が中心となります。
これらは中国医学(中医)とは大きく異なり、中医では脈診が中心で、虚証とは『気』の虚であり、実証とは”邪気”の集積ことを言います。『証』は「八綱弁証」「臓腑弁証」「気血津液弁証」などを組み合わです。

 どちらが優れているのか、ということではなく伝統と思想、臨床経験の違いです。
後ほど述べますが、私的に言えば、要するに『気』をどのように捉えるか、それに尽きる話だと考えます。

その意味では『気』の把握はとても大事なことと言えるでしょう。

『気』を把握する

 私は40年余りの臨床経験の中で『気』を探求し、研究をしてきましたが、実際のところ、『気』を感覚として認識したのは25~6年ほど前のことであり、それ以前は全く手探りの状況で真の『気』を知ることはなかったのです。つまり、それ以前というのは極めて教科書どうりの診療スタイルであり、『気』を求めてさまよっている状態だったと思います。

 どういうことかというと、中医学の古典や漢方の教科書には『気』の存在と働きがしっかりと書かれています。『気』に基づいて診断と治療が理論構築されています。にもかからわず、自分にとって、その本質は曖昧のままであり、それを実感することもほとんどなく、また説明できる人も周囲にはいない状態でした。
つまり、理論上の『気』を仮定するだけで、具体的かつ説得力をもって語ることができない、そのような存在にすぎませんでした。

 すなわち脈診は脈診の診方どおりであり、舌診や腹診もまた教科書どおりの診断の仕方・方法を組み立てて『証』を決めるのであり、それはそれで正しい伝統的な診察法ではあったものの、私自身の『気』を求め、真実を知りたいという性格と欲求、それを探求してどこまでも行くつもりが、結果的には、行ったり来たりの無知無明・試行錯誤の状態だった、というわけです。

 しかし中国へ留学したことで中医の基礎、ならびに漢方とは別の世界(鍼灸など)に触れて状況は変わってきました。帰国後、より一層情報を集め、探求の範囲を広げていき、「Finger Test・FT」という極めて優れた診断治療法にめぐり会うことができ、そこで『気』の一端をつかむことができました。さらには開業後に、‘真実’の『気功』に出会うことができ、薫陶を受ける機会を得たことで、実際に『気』に触れ、わたし自身も『気』をエネルギーとして感じられる体質へと変わっていき、それを診療に応用できるようになった、という次第です。

 『気』は確かに存在する。そして、臨床的に診断することも応用することもできる。それを強く認識し、確信した次第です。
すべては良きご縁、良きめぐり逢いのおかげであり、感謝をささげながら診療を続ける日々であります。

どこを診るのか

 では、『気』を診るにあたって、何を診るのか、ということについて述べたいと思います。

端的に言えば、『気』の不足、『気』の流れ、それに伴う身体の不調を診ていくことになります。
『気』は全身をめぐりますから、全身の状態を把握します。すなわち、体全体としての調子はどうか、ということです。全身のスクリーニングと思ってもよい。それは、『気』だけの問題ではありません。『血』の状態、そしてそれらから派生する「水」の流れ、養分の流れ、気血の状態、冷えの状態、精神的な状況、そして、内臓(臓腑)筋肉、骨、骨格のあらゆる場所、目や耳の感覚器官などです。

そののちに、各臓器、各『経絡』の状態、心と精神の反応など。
しかしながら実際には、現代医学・生理学的な検査や検診ももちろん併用します。多方面から解析することが重要なポイントであると考えます。

別の項目で述べますが、現代に生きる私たちに最も必要なものは最適な栄養と、運動、そして休息、さらに睡眠などの生活リズムであり、それを含めた養生と思っておりますので、それらなくしては漢方や東洋医学、ホメオパシー(統合医療)は成り立ちません。ですから実際の臨床においても、それらを含めて説明しています。

 

どのように漢方を選ぶか

最後にどのように漢方を選ぶのか、そのことをお話しします。

『気』を理解し、把握できれば、漢方の選び方はそれほど難しくはないと考えています。適切な漢方薬に体は良好な反応を示すからです。

一方で、不適切な漢方を選んだ場合、体は全く逆の反応を示します。まるで身体という肉体に意思があるかのようです。途中で合わなくなった・適合しなくなった場合には漢方は替えなければなりませんし、不要であれば中止すべきです。不思議な話ですが、それが『気』の特徴であり特性ということになります。

我々医療側・治療家の役割は何かと申せば、患者さんの身体の状態を的確に見抜き診断することに他なりません。そうすることで、患者さんの身体は的確に反応を示してくれる、ということになります。

 

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